「ルールを守ればうまくいく」と信じていた頃
小学校の朝、制服を着て、時間通りに登校し、朝の会で整列する。
そんな当たり前の風景を、あなたも経験してきたのではないでしょうか。
「決まったことを守る」ことに安心があり、
先生の言うことをちゃんと聞ける子が“いい子”とされる世界。
これが、ティール組織で言うところの「アンバー(順応型)」の価値観です。
ティール組織におけるアンバーとは?
ケン・ウィルバーのインテグラル理論では、アンバー段階は次のように定義されます:
- 規則と秩序を尊重する
- 権威への従順
- 社会的な役割とヒエラルキーを重視
- 「こうあるべき」という信念が強い
この段階では、個人よりも集団の中での「正しい振る舞い」が重要になります。
それは一種の安心感や一体感を生むからです。
日常生活の中にあるアンバーの世界
たとえば、会社の朝礼。
みんなが同じ方向を向いて整列し、代表が「今日の目標」を唱和する。
あるいは、町内会でのお祭り。
役割がしっかり決まっていて、「〇〇家は今年はお神輿の担当ね」といった暗黙のルール。
これらはすべて「順応型」の社会的構造。
規律があって、守るべき秩序がある。そこに安心感があるのです。
例え話①:ラーメン屋の新人バイト
あるラーメン屋さんで新人が入りました。
店主は「まずはマニュアル通りにやってくれ」と言います。
スープを注ぐ順番、麺の湯切りの回数、あいさつの声のトーンまで決まっている。
なぜなら「安定した味とサービスを守るため」。
このマニュアル重視の姿勢は、まさにアンバー段階。
最初はその型に“はまる”ことで、混乱せずに力を発揮できるのです。
アンバーの価値:秩序があるから回る社会
アンバー段階には以下のようなメリットがあります:
- 明確なルールで迷いが減る
- 社会の中での“自分の居場所”が分かる
- 役割が固定されていることで安心感がある
交通ルールや税制度、学校教育、会社の就業規則など、
私たちが日々の生活を滞りなく送れるのは、アンバー的な仕組みがあるからです。
例え話②:家族の中の「役割」
夕食のとき、母は料理、父は皿洗い、子どもはテーブルの準備。
それぞれの役割が決まっていると、自然と流れがスムーズになります。
「私はこれをすればいいんだ」と分かっていると、
迷いも減り、家族全体が心地よく過ごせます。
この状態もまた、アンバー段階の象徴です。
限界:変化に弱くなる
アンバー段階は「変化」に対して弱さがあります。
想定外の事態が起こると、マニュアルが役に立たなくなり、混乱が起きる。
たとえば、ラーメン屋で「急に外国人観光客が団体で来た」としたら、
マニュアル通りでは立ち行かなくなります。
新しい発想や柔軟な対応が求められる場面では、
アンバー的な思考では対応しきれなくなるのです。
ケン・ウィルバーの視点
ケン・ウィルバーは、発達段階を理解する際の注意点として以下のように述べています:
思いやりと関心が自己から集団へ拡大される。しかし、それ以上にはいかないのだ!もしあなたが同集団のメンバー、つまり私の部族、私の神話、私のイデオロギーのメンバーなら、あなたも同じく「救われ」る。だが、もしあなたが異なる文化、異なる集団、異なる神に属していれば、あなたは呪われるわけだ。
ケン・ウィルバー
この言葉は、発達段階を評価や差別の基準とするのではなく、理解と共感の手段とする重要性を示しています。
ケン・ウィルバーの警告
段階理論を「他人を見下すために使うべきではない」と述べています。
「発達理論というものが『諸刃の剣』になり得るということである。活用の仕方を誤ると、この理論を容易に、人間を順番付けするための道具に堕してしまうことにもなる。」
つまり、アンバーが劣っているのではなく、
「そこに価値があるけれど、時に限界もある」というだけの話です。
アンバーを活かすには?
私たちは日常の中で、アンバーの価値を上手に取り入れることができます。
- 家族やチームの「ルール」を決めておく
- 一貫した行動や習慣で安心感を与える
- 誰が何をするか明確にする
これらは混乱を防ぎ、秩序と信頼を生む基本です。
まとめ:アンバーは「型」を教えてくれる段階
アンバー段階とは、「社会の型にはまることで安定する」時期。
それは決して古くさいことではありません。
型を知るからこそ、やがてその型を超える力が養われるのです。
ティール組織的な視点では、各段階を“否定”するのではなく、
“統合”しながら進んでいくことが大切だとされます。
次は、ルールを超えて「自分のやり方で成果を出す」段階——
オレンジ(達成型)へと向かっていきます。
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